3月2日から開かれた杉並区議会予算特別委員会での、杉並わくわく会議・松尾ゆりの発言を紹介します。これは草稿で実際の発言とは一部異なる部分がありますのでご了承下さい。また、質問に対する区当局の回答など予算委員会でのやりとりは「松尾ゆりの予算委員会日誌」をご覧下さい。
杉並区2009年度予算に対する松尾ゆりの発言
杉並わくわく会議・松尾ゆりです。議案に対して意見を申し述べます。
一昨年来の経済の変調、とりわけ昨年秋以降の急激な景気の悪化の中で、区民の生活を支える区の役割はきわめて重要になってきています。その視点をふまえ、来年度予算案について検討しました。以下、何点か述べます。
●「税こそが最大の規制」なのか
第一に減税自治体構想と区のめざす方向性について。
委員会の中でさかんに質疑のあった問題ですが、なぜあえて、将来の減税のために現在を犠牲にしなければならないのかとの疑問は解消しないどころか、つのるばかりです。
要は杉並区が何をめざすのかが、問われているのではないでしょうか。
区長は、減税自治体構想研究会で「税負担を避けることが重要」と発言、また、本会議代表質問の答弁では、「税こそが最大の規制」と発言しました。とりわけ税の所得再分配機能に対し否定的な考え方をのべたことは、行政の根幹にかかわる、重大な問題発言ですが、税を縮小し、なくしていくことこそが減税自治体構想の究極の目的と考えるのが自然です。
しかし、議会などからの批判をそらすためか、研究会の検討の途中から「災害時の緊急財政出動にそなえる」などの別の意味が付加されてきました。ですが、それならば、これまでの基金の運用で十分であり、なにも、財政の1割をつみたてることはないのです。
●予算・人員の削減システムづくり
区は減税自治体構想の実施可能な根拠として、これまで一般会計の1割以上を起債の償還にあててきたので、今後も同額を積み立てとして控除することが可能としています。
これを逆から見れば、これまでやってきた厳しい行革、合理化を今後も続けていくための根拠づけ、予算・人員の削減、しめつけを、今後も、あくまでも、山田区長が去ったあとまでも続けていくためのシステムづくりといえます。
山田区長のこの10年間、区は財務上の数字ばかりを必死に追いかけ、人員を減らし、予算をきりつめ、サービスを削減してきました。その一方で、各事業分野についての長期的な視野を失ってきました。毎年毎年、行政評価で「コスト削減が、できるか、できるか」とギリギリ攻められ、人員も削られる中では、どの部署も長期的な視野にたって区民サービスの向上について、どこへむけて、どうのぼっていくかという明るい展望を描くことができないのであろうと思います。
明日どれだけコストカットするかばかりを迫られている現場では、「遠きをみすえる」どころではなく、今日、明日の業務をどうやってこなすかに追われるしかありません。
●場当たり的な対応で保育園不足!
その結果たとえば、介護、保育など福祉の分野ひとつとっても、場当たり的な対応となってしまい、施設の不足、サービスの不足で区民から悲鳴があがっています。
委員会では保育園の待機児問題が盛んに議論されました。たしかに、今年の入所希望者急増は予測しえなかった規模になっていると思います。しかし、実は、一昨年ごろからすでに、保育園に入れない人は急増していたのです。にもかかわらず、区は保育所不足を解消するための認可園の増設という決断をせず、認証保育園などによる応急的な対応に終始してきました。その結果、今日の区民の苦難を招いたのです。ものごとには発生、発展の歴史があります。今般の待機児急増も、決してある日突然発生したものではありません。ちなみに、いただいた資料によれば、2年前とくらべ、0歳児入所希望者はプラス330人と急増したのに対し、認可保育園の0歳児定員はわずか7名しか増えていません。待機児急増の根本原因はここにあります。
杉並区の行革優先、数字優先の区政運営の姿勢が、たとえば今般の保育難民ともいうべき状況を生んでしまったのであり、その責任は重いといわなくてはなりません。
●移動支援の時間数削減の末に
高齢者、障害者の施設の不足はいうまでもなく、居宅サービスも不足しています。
来年度予算で、移動支援の上限を25時間から50時間に倍増するとして区は胸を張っています。
冗談ではありません。もともと、支援費制度のもとで50時間だったものを、自立支援法発足時に、いきなり半減しました。他区と比べても極端な、有無をいわせない、無慈悲な削り方でした。25時間以下の人でも、サービスの利用が認められるためには、福祉事務所や区役所に何度も何度も足を運び、担当者とやりあって、やっと認められるという厳しい状況でした。
今回50時間にするといいますが、多くの区民の犠牲を経てやっと3年前の水準に戻すだけの話であって、いばれる話ではありません。むしろ「これまでご迷惑かけてすみませんでした」とひとことあってしかるべきです。
福祉事務所、区役所に頼み込んでも、かたくなに25時間にこだわって、どうしてもサービスを利用させてもらえないという声をどれだけきいたかわかりません。そうやって切り捨ててきたものを、わずか3年で撤回して50時間に戻すということ自体、いかに区が先の見通しなく行政サービスのコスト削減と数字の改善だけに血眼になっているかの証左であります。
このような数字至上主義の区政運営の姿勢を転換し、区民に必要なサービスをいかにして実現していくかという観点にたって、本当のビジョンをもった区政にかえていかなくてはなりません。
●緊急雇用対策のお寒い中身
第二に、雇用、労働問題に対する区の姿勢です。質疑の中では緊急雇用対策についてうかがいました。今年度の30人のアルバイトは10人の採用にとどまりました。来年度予算で予定している170名のうち、90名は民間の認証保育所新設などによる保育の人員であり、独自の雇用対策とはいえません。しかも、そのほとんどは非正規の保育士です。残りの80名について質問したところ、月収5万円程度のアルバイトや一日2200円のボランティアまで計上されていることに驚きました。これらは雇用と呼べるような実態はありません。
●警察OBの採用が「雇用対策」とは
その一方で、路上喫煙の過料徴収に警察OBを雇うとした、これだけはなぜか待遇のいい事業もあります。警察OBを雇いいれるためだけにわざわざ過料の徴収を始めるともとれます。本来仕事に困っている人のための緊急雇用対策事業なのに、年金も保証されている公務員の退職者を雇いいれるために年間2000万円近くも費やし、本来このお金で職につけたはずの人たちを排除する結果になることは認められません。
このように、区の緊急雇用対策は200人、といばってみたものの、雇用対策の名に値するのは、100名に満たないという惨憺たる実態が明らかになりました。
●職員削減をやめ、若者に安定した雇用を
ところで区は、職員定数削減の目標を来年度110名から120名に前倒しして行うとしています。今でさえすでに人員が足りなくて、職員の皆さんが過重労働になっているところへ、乾いたタオルを絞るように、人員削減を要求するのは、もうムリです。委員会の中で他の委員から、歯科衛生士についての質問が出ました。2つの保健センターで他の業務との兼任とすることで1所につき0.5人の人員削減とするということをうかがい、涙ぐましさすら感じました。それほどまで、もう人を減らすことができない、限界にきている区役所の中で、さらなる前倒しの人員削減などやめていただきたい。
定数削減によって、さらに新たな雇用が失われ、若者が就労の機会を失います。現下の厳しい経済情勢のもとで、区が職員定数を減らし、採用を減らすことは、犯罪的であるとさえ言えると思います。
今やるべきことは、定数削減をやめて、むしろ区の直接雇用、安定した雇用の機会を増やすことではないでしょうか。同時に、非常勤の区職員の待遇改善も急務です。
●委託先の労働条件に区は責任を持て
あわせて、区は民間委託、指定管理等、多くの事業を民間にまかせています。委託先の労働条件の問題は非常に深刻です。
この話になると、区はつねに、労働法を守ってやっていると信じる、とか、全く事業者まかせです。これは大変無責任な態度であるといえます。
委員会の中で申しましたが、千代田区は指定管理者制度に労働モニタリングをもうけ、委託先に社会保険労務士など専門家を派遣して、ことこまかに労働条件、労働環境をチェックしています。委託先の企業からも「勉強になった」との声もあるそうです。国分寺市では「調達に関する基本指針」を構築中であり「適正な労務条件等が確保されて履行された調達であるかどうかを市が把握し、これにより、労務環境の適正化を推進する」と、労働条件を守ることに強い意欲を示しています。当区においても、これらの自治体に遅れることなく、公契約条例に関する検討を開始していくべきですが、答弁では、全く前向きな姿勢が示されず、事業者丸投げの無責任な態度に終始したことは問題です。
以上、雇用対策においても、また、区の職員体制においても、委託先の雇用条件においても、区は労働条件、雇用問題をきわめて軽視しており、区民生活の根本を脅かすものとして看過できません。
●区の教育の現状と問題点をきちんと議論すべき
このほか個別の問題について、いくつか指摘します。
第一に教育についてです。まず教育基本条例です。委員会の中では「条例にこだわらず、宣言、憲章のかたちで」という答弁がありました。それはけっこうですが、問題は中身です。今後の杉並の教育に妙なバイアスをかけるようなものができてはなりません。
山田区政のもとでの10年、杉並の教育は、つくる会教科書、師範館、和田中夜スペなど、公教育本来の姿から、大きく逸脱してきました。このような状況をよしとするのかどうか本質的な議論をせず、単に宣言だからよしというわけにはいきません。区民を小手先でごまかすのではなく、区の教育の現状と問題点、あるべき姿を大いに議論していくべきです。
●創造性を奪う学校間ネットワークシステム
教育についてはいろいろありますが、もう1点だけ付け加えます。校務システムの問題です。委員会では個人情報保護の観点から質問しましたが、教育内容の観点からつけくわえます。
現在構築されているネットワークシステムでは書類はすべて1つの様式に統一されます。しかし、教育という営みは、非常に個別的な営みであって、成績のつけかた、えんま帳のつけかたひとつとっても、それぞれの教員の個性、生徒の個性が反映され、ひとつひとつが長年の積み重ねでつくられてきています。
たとえば通知表を例にとると、学校ごとで全部評価の仕方はばらばらだそうです。小学校では2段階だたり3段階だったり、あるいは教科ごとの評価が明示されない学校もあります。これを校務システムでは4つの中から選べということで、非常に画一化されてしまいます。
ビジネスであれば、様式を統一して、事務を合理化することは意味があるでしょう。しかし、学校で、ある先生と隣の先生のえんま帳を同じ様式にしたところで、何が得られるのでしょうか。むしろ多様性、個別性、創造性を奪い、教育の内容を貧困にしてしまうことになります。
保護者の中からも、このネットワークに関して、疑問の声が上がっています。事業の再検討を行い、情報の当事者である生徒・保護者への十分な説明をするため、システム稼動の延期を再度要請します。
●拉致問題講演会は区長の政治利用
第二に、拉致問題への対応です。来年度「共感の輪」として、拉致被害者家族会の講演会と、同会への支援をよびかける活動が計上されていますが、拉致被害者、家族の救済を願うのであれば、北朝鮮との即時無条件国交正常化こそが最も近道です。私は23区日朝友好推進議員連盟の一員として、地域の在日の皆さんとの友好の上に、区が日朝国交正常化の方向で力をつくすべきと訴えます。
区長など一部の右派政治家が、北朝鮮敵視をあおり、排外主義をあおるために拉致問題を政治利用していることは、問題の解決と被害者の救済をますます困難にするだけです。その点から、予定されているこの事業について反対します。
●外環道建設にははっきり反対を
第三に環境にかかわる問題です。
本会議でも質問しましたが、外環道建設計画の事業着手が迫っています。区は地元区民のつよい反対の声をどのように受け止めているのでしょうか。
区長は環境と区民生活を守るために、事業着手反対の姿勢を明確に示すべきですが、区は、1月に着工後、施工後の環境対策を申し入れるなど、むしろ着工を容認したともとれる後退した姿勢は許せません。
●杉並中継所が終わっても、杉並病は終わらない
もうひとつ、杉並中継所の操業停止に関連して申し上げます。本会議でも、清掃リサイクル特別委員会でも、再三質問してきたことです。この3月末で、操業が停止されることは、止まらないよりはよいことです。しかし、あまりにも遅すぎた、遅きに失したといわなくてはなりません。
山田区長は、99年の初当選時、杉並病の解決を公約に掲げたにも関わらず、当選後は態度を翻し、安全宣言を行いました。杉並病の被害者を黙殺し、杉並病は終わったかのような態度をとりつづけてきました。
今般の操業停止は、区長の努力では全くなく、単にごみの分別変更によって、不燃ごみがへり中継所が不要になっただけのことです。その証拠に、分別変更が始まるまでの不燃ごみ量は全く減っていませんでした。
中継所の停止が見えてきたためか、先日の委員会で区長は「被害者の声もとどいている」などといっていましたが、この10年間、健康被害に苦しむ被害者は区長と会いたいといっても門前払いを食らわされ、悲しんでいたのが実態です。
関係部局に被害の実態を訴えても「被害は鎮静化している」の一点張りで、被害者はどれだけつらい思いをしてきたかわかりません。住んでいられなくて転出した人もたくさんいます。自らの選挙公約に反し、被害者を裏切って、10年間無視してきて、いまタナボタで操業停止となったら、自分の手柄のように語る区長は、いったい被害者に対し、どのように申し開きをするのでしょうか。
●杉並病被害者の救済と公害の原因究明は杉並区の責務
中継所は停止されますが、それは杉並病の終わりを意味しません。
すぐに環境がクリーンになるわけではなく時間がかかります。それ以上に被害者の体は容易に回復しません。すでに亡くなった方もあります。また、一生治らない重症の方も多いのです。これらの方々の救済をどうするのか。さらに、杉並病の原因は全く不明のままで、究明が求められます。これらは区の責務として、引き続きつきつけられています。
「中継所がとまってよかった、よかった、被害者の方はお気の毒でしたね、でももう終ったことだから」などという他人事のような態度は断じて許されません。前代未聞の健康被害事件となった杉並病問題を、あらためてしっかりととらえ、被害者の救済、公害の原因究明、また、操業停止後の環境のフォローアップ調査をひきつづき行っていくことが、区に求められているということを最後に訴えます。
以上の意見を踏まえ、議案第28号平成21年度一般会計予算、ほか各会計予算に反対します。
また、議案第14、17、18、20号には賛成し、それ以外の議案には反対いたします。
最後になりますが、今回の予算審議にあたっては、多くの職員の皆様が、資料作成にご協力くださり、また丁寧にご教示くださったことに、心より感謝申し上げ、締めくくりといたします。
