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オバマ大統領プラハ演説をどうみるか
松尾ゆりの杉並区議会報告杉並わくわく会議・松尾ゆりは2009年6月19日の杉並区議会本会議に議員提出議案として出された、「アメリカ合衆国大統領による『核兵器のない世界』に関する演説に賛同し、核兵器廃絶に向けた取り組みの強化を求める決議案」に対して反対意見を述べました。

この決議に「反対」というと、「え? 反対なの?」と驚かれる方もあるかもしれません。オバマ氏の4月5日プラハ演説は「核を使用した核大国としての道義的責任」から「核兵器を削減」することをよびかけ、ここだけとりあげると、まるでアメリカが心を入れ替えたようにも見えます。

しかし、この演説の本質はちがいます。「テロとの闘い」、そして「核の不拡散」、つまり北朝鮮やイランなど、これ以上新しく核保有国が増やさず、あくまでも世界の覇権を手放さないためのアメリカの世界戦略の軌道修正にすぎません。詳しくは下記本文をごらんください。

 オバマ米大統領のプラハ演説に賛同する決議案に対して、反対する立場から、意見を申し上げます。

【1】 アメリカの主張を幻惑する美辞麗句

 反対する理由の第一は、この決議案に書かれているオバマ大統領演説の趣旨は、全くとらえかたが間違っているということです。

 この決議案はプラハ演説の一部をとりあげて、アメリカが「核のない世界」をよびかけた「歴史的な画期的演説」「心から感銘し、賛同を表明する」と手放しで評価しています。しかし、プラハ演説の全文を読めば、「核のない世界」はオバマ氏自身が「自分の生きている間には実現しないだろう」とのべているとおり、核兵器削減の実態に裏付けられたものではない、単なる美辞麗句、あるいは幻惑装置であって、アメリカ政府、大統領の主張は別のところにあることがわかります。

 演説では、他国の核兵器が存在する限りはアメリカも核兵器を手放さないこと、また、同盟国を防衛すること、すなわち、核の傘を提供することを保証することとしており、もちろん、一方的な核兵器の廃棄や削減を行う気などさらさらないことは明らかです。

 演説は、その主要な部分を「核拡散の防止」と北朝鮮およびイランの核に対する非難にあてており、オバマ氏の主眼はここにあります。核拡散防止条約の強化、この条約から離脱する国々への実効ある措置、ルールを逸脱するものに対するより厳格なアプローチや違反に対する罰則などという言葉で語られています。

 具体的には、このプラハ演説と同じ日に行われた北朝鮮のロケット発射に言及し、「世界は核兵器の拡散を防止するため立ち上がらなければならない」として「強い国際的対応」をよびかけています。イランの核開発に対しても同様です。核廃絶を求めるのではなくて核の拡散に反対するという姿勢は明確です。

 今回の演説の意図は大きく2点あります。
(1)ひとつには、アメリカは財政的な負担から現実に自国の核兵器保有の縮小を余儀なくされているということです。
(2)もうひとつは、なおかつ、世界の覇権をアメリカが手放さないためには、他の核保有国とも連携して、北朝鮮やイランなどの新たな核保有、つまり核兵器の拡散を阻止しなければならない、全体として、アメリカを中心とした核独占体制を再構築するという戦略目標です。


 この決議案が、オバマ氏のことばの一部に対し(おそらく「核兵器を使用した唯一の国としての道義的責任」という部分でしょうが)素朴に感動して作られたものであろうことを非難するつもりはありませんが、それは人がよすぎるのです。

 私たちは、演説の中から、耳当たりのいい、私たちに都合のいい文言だけをひろいあげて、単純に喜ぶべきではなく、アメリカの世界戦略を冷静に見きわめなければなりません。その点から、この決議案はきわめて一面的であり賛同できません。


【2】 懸念される政治的悪影響

 第二に、このような決議が出されることの政治的悪影響についてです。

 プラハ演説を全面的に賞賛するこのような決議が出されれば、先に述べたように、核保有5大国、あるいはイスラエルなどの既得権を守り、それ以外の北朝鮮、イラン、あるいはそれに続く途上国の核を否定し、核拡散を防止するというアメリカの世界支配戦略に我々も積極的に賛同し、組み込まれてしまうということであり、賛成できません。

 おりしも、北朝鮮の核実験をめぐり、国連決議がなされたもと、日本政府・与党は独自の船舶貨物検査法の制定をめざしています。

 一方、一部の論調として「敵基地攻撃論」など、きわめて好戦的な論調があります。こうした動きは、日本自らが戦争へと導く、きわめて危険な動きです。必ずしも提出者の意図するところではないのかもしれませんが縷々述べたように、この決議案の客観的な位置は、北朝鮮への攻撃を容認するものとなります。その影響は甚大であり、とりわけこの決議が「原水禁運動発祥の地・杉並」の名において行われることは認められず、反対いたします。