松尾ゆり

わくわくレポート101号 2008年5月

今号では、とどまる所を知らない福祉への負担増と、問題の拡大を続ける「和田中」、自衛隊のイラク派遣への違憲判決を取り上げました。

イラク自衛隊派遣に違憲判決

 やや旧聞に属しますが、4月17日名古屋高裁の判決については触れないわけにいきません。自衛隊のイラクへの派遣は、2003年、国民の大多数が反対する中で強行され、これに対し全国各地で数千人の市民が違憲訴訟を起こしました。そのうちの一つの裁判である名古屋で「自衛隊のイラク派遣は違憲」とする判決が出されたのです。しかし、政府はあくまでも派遣を継続。司法判断は全く軽視されています。イラクには「有志連合」と言われる国々が兵士を派遣しましたが、多くはすでに撤退しました。何が本当の国益なのかを政府は考え直すべきでしょう。

 翻って国内をみると、少女への暴行事件、タクシー運転手の殺害など在日米軍の兵士による犯罪が跡を絶ちません。米軍にかしずいているばかりの対米従属の政治では国民が救われないのです。


和田中「夜スペ」拡大で問題も拡大

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和田中

 問題の杉並区立和田中「夜間塾」(夜スペ)が希望者全員に対象を広げると報道されました。都教委が指摘していた「教育の機会均等」に配慮したものでしょうが、裏返せば、これまで「「夜スペ」に入れない子は「ドテラ」でフォローしているから機会均等に反しない」と強弁(校長も区教委も)してきたのは、言い逃れに過ぎなかったことを自ら認めたともいえます。

 対象を拡大したからといって、夜間塾の違法状態が是正されたわけではありません。業者選択の公正性、特定の企業の事業のために公共施設を使うことの公共性など全く解決されていません。塾が本当に必要かという議論すらないままに、塾を学校によびこむことがなしくずしに既成事実化していこうとしています。教育委員会はきわめて無責任です。

PTA解体に異議

 和田中・藤原前校長がPTAを廃止すると発表したことに対して、杉並区内のPTA会長経験者らがPTAの意義を尊重し活性化をよびかけるアピールを発表しました。

 アピールでは、杉並区のPTA活動の歴史の中で、高校増設や栄養士の全校配置などを実現し、教育の向上に役立ってきたことを示し、和田中の方針は、
(1)PTAを、単なる学校の「お手伝い」に変えてしまう 
(2)PTAを保護者組織に変えることで教員を排除し保護者との関係を分断する
など異議を示しています。

 PTAは学校から独立した組織であり、会員自らが学び「人格識見の向上を図る」(杉並区教育委員会『PTAハンドブック』)自主的な社会教育団体。「わが子、わが学校だけよければ」などという狭い料簡ではなく、広く学校教育全体の向上をめざしていくのが本旨です。公的な施設を使って塾の営業活動を行う和田中地域本部は「子どもたちのため」を掲げながら、その実、目先の「わが学校」への貢献だけを求めてはいないでしょうか。


「後期高齢者保険」の次は消費税を18%に?

 「後期高齢者」医療保険制度の開始で年金天引きの衝撃もさめやらないところへ、社会保障国民会議(社会保障費削減のため政府に設置された機関)は基礎年金を全額税でまかなった場合9.5~18%への消費税引き上げが必要という試算を公表しました。もともと財界は数年前から消費税は18%程度まで引き上げが必要という提案をしており、消費税引き上げは政府・財界の悲願ともいえます。

介護保険は2割負担…?

 一方、財務省は、介護保険の自己負担を現在の1割から2割に倍増する試算を発表。介護保険の財政負担をいかに抑制するかを試算してみたものです。

 介護事業所は、報酬が抑制されているために、人件費が不足し、介護労働者の低賃金・重労働、その結果慢性的な人手不足にあえぎ、ヘルパーなどのサービスが不足しています。しかし報酬を引き上げると、保険料に跳ね返ってくる仕組みになっているため、どちらに転んでも利用者には厳しい仕組みになっています。

 介護保険制度の行き詰まりは明らかです。措置制度時代のように、福祉サービスは基本的に政府が負担する(払う能力のある利用者には支払っていただく)仕組みに抜本的に改めなくては、私たちは苦しくなるばかりです。財源は弱い者からとる消費税ではなく、高額所得者と大企業に負担してもらいましょう。