松尾ゆり

わくわくレポート126号 2010年4月

2010年度予算案の審議では
「減税自治体構想」が大きな論点に

松尾ゆりはこの構想に反対しました。理由は

  1. 利子を稼ぐことを目的に貯金することは地方財政のあり方としておかしい。
  2. 税は住民サービスに使われるべきであり、投資効果としてもそのほうが高い。
  3. 貯金のためにいっそうのサービス削減や区職員削減が進められることは本末転倒。
  4. 実現性も低い。不況下で積立額を確保できる見通しは低く、利子収入も少額である(区民税ゼロ実現には600年かかる)などです。

 しかし、記名投票の結果、自民・公明・民主などの賛成多数により残念ながら条例案は可決されました。これに先立つ審議では、松尾ゆりを含む4名の議員が提案した修正案をめぐり、区長支持派の議員からすさまじいヤジと怒号が飛びかい、区長までがヤジをとばす有様。質問する議員の発言が聞こえないほどの騒然とした議事の中で条例は可決されたのでした。


「借金ゼロ」の道も険しく

 与党の議員は「山田区長就伊任以来、職員1000人削減附など行革に努めた結果、借金問ゼロの見通しが立ち、基金も削貯めてきた。この調子でこれ鮪からも基金を貯め、減税がで捌きるだろう」とほめ讃える一方でしたが、事実は全く違います。杉並区が財政を改善できたのは当時の景気回復のおかげで、行革の成果とはいえません。

 その証拠にお区ではすべて区債(借金)が減っています。最も減った港区では20%以下ですが、杉並区は約40%。23区平均は52%余(すべて99年と08年の比較)ですから杉並だけが飛び抜けてエライわけではありません。

 逆に一昨年からは不況の影響をまともに受けています。一時5百億円以上に達した区の基金も3百億円まで減りました。来年度予算は、新たな借金こそしませんが「貯金」を150億円取り崩し、他方「返済」は約20億円にとどまります。「借金ゼロ」への道のりは険しくなっています。


待機児対策は幼稚園たのみ?

 予算で問題に思ったことのもう一つは保育対策の遅れです。今年も認可保育園入国は大変でした。19OO人の申し込みに対し募集は110O人しかなく、兄弟が別の保育園など当たり前というすさまじい状態。これに対して、区の計画では2013年までに12OO人の定員増を予定しているので待機児は解消されるという説明です。

 しかし、そのうち認可園の定員増は300名程度にすぎず、計画の半数近く(46.7%)は区立・私立幼稚園での保育に頼る計画です。認可に入れない人が現在でも約7OO人いるというのに、全く実状に合っていません。

「詰め込み」保育園の心配

 杉並に限らず都市部はどこでも保育園が不足しています。

 しかし、民主党・鳩山政権は保育園増設のための補助金を増やすどころか、施設はそのまま、東京などでは基準より面積が狭くても認める、つまり狭いところに大勢を受け入れるとしているのです。区長はじめ杉並区は規制緩和を歓迎していますが、詰め込み保育は幼い子どもたちの命に関わります。

 小泉政権下で定員の弾力化や保育士の資格要件の緩和が行われた結果、保育園での死亡事故が激増しています。保育団体や専門家はむしろ一人当り面積などの基準を引き上げるべきと指摘しています。

 お金のある東京だからこそゆとりを持って保育できる認可保育園をたくさん建てるべきなのに、杉並区は区民の切実な願いに背を向けています。(予算委員会ではこの他に雇用対策や高齢者福祉、生活保護行政などを質問。予算案に反対しました。)


セシオン杉並など
賃金不払い事件その後

 昨年秋セシオン杉並などの区民施設で賃金の不払い事件が起きました。施設の管理を行っていた委託業者の経営状態が危うくなったためでした。

全国で千人以上の職員に対して
2億円以上の未払い賃金を残したまま会社は倒産

 この事件は、地方自治体が進める民間委託の問題点を浮き彫りにしました。行政の仕事でありながら賃金が安く、「官製ワーキングプア」といわれる貧困層を作り出していること、労働契約もあいまいな不安定な就労なのに行政のチェックが入っていないこと、他方、事業者側から見れば、入札を繰り返す度に、どんどん委託料が下がっていき、経営が成市り立たないほど安くなっていることです。

事業が成り立たない落札額

 杉並では、委託業者が交代した後も、賃金の計算違いがいつまでも精算されなかったり、賃金が引き下げられたりのトラブルが続いています。

 事業者の責任も大きいですが、落札金額が委託初年度と比べ7割まで下がってしまったことも困難の原因になっています。委託料が安ければ安いほどいいとする行政の無責任な姿勢を転換する必要があります。

適正な利益、適正な賃金を

 労働組合は3月、新に連合東京傘下の「行政関連ユニオン」としてスタートを切りました。行政関連の委託先で働く人たちが団結して、企業だけでなく、発注元の行政とも交渉し、適正な契約、適正な労働条件を獲得していくこと、また「※公契約条例」を実現していくことを目標として掲げています。

※公契約条例とは
自治体が工事や委託事業で民間と契約する場合に適正な賃金を払えるような条件を定めるもの。ダンピングやピンハネをなくし事業者の適正利益の確保にもつながります。千葉県野田市が昨年全国で初めて条例を制定しました。


普天間基地は撤去しかない

 沖縄・普天間基地の移転問題がいよいよ行き詰まっています。政権交代以来この普天間基地の問題で民主党政府はゆれ続け、沖縄の期待は失望、怒りへと変わりました。沖縄県議会は全会一致で普天間基地の閉鎖、返還と県外・国外移転を求める意見立書を決議、4月末には大規模な県民集会が予定されています。折しも日米安保改定50年。もはや小手先の対応ではなく、基地の撤去と日米安保の根本的な見直しが求められています。


朝鮮学校と「高校無償化」

 朝鮮学校を無償化の対象とするか否かが問題になっています。国連の人種差別撤廃委員会でも問題になり、委員会は日本政府に対して勧告を行いました。しかし結果として、朝鮮学校は「第三者機関の検討」により秋以降適用するかどうか判断、とされています。全く不当な差別的取り扱いです。

 中井拉致担当大臣など適用反対派の主張は「拉致問題などで制裁を行っている国だ」というものです。しかし、仮に国と国との関係が険悪であったとしても、そのことは生徒とは関わりのないことです。また「学校の教育内容が把握できない」と言いますが、ほとんどの大学が朝鮮高校卒業生に受験資格を認めているように教育内容は日本社会ですでに認められています。

 日朝間にあえて懊を打ち込み、国民に朝鮮を敵視させる政府のやり方では、鳩山首相の掲げる「東アジア共同体」が空しく響きます。

 自民党から共産党、無所属まで超党派の自治体議員でつくる「日朝友好促進東京議員連絡会」は政府に対して朝鮮学校をはずさないよう要望書を出しました。また、杉並区議会でも、超党派の議員有志が連名で要望書を出しました。


区長が在日韓国人団体攻撃

杉並区の山田区長は外国人参政権に反対する集会での発言や雑誌への寄稿で「つくる会教科書に最もひどい反対を行ったのは民団(在日本大韓民国民団)だった。議会の傍聴席に異常な数を動員、ヤジをとばし、区長室に陣取ってシュプレヒコールを行った」と述べ、外国人地方参政権への反感を煽っています。

 これらは事実無根であり、在日韓国人の方々に対する憎悪に満ちた発言が杉並区長のものかと思うと、区民として恥ずかしい限りです。第一、「つくる会」教科書反対運動は杉並区に住む日本人が大多数を占めていましたから、その点でも事実とは違います。

 予算委員会では何人もの議員がこの発言をとりあげて批判し、謝罪と訂正を求めましたが、区長は訂正の必要なしと開き直るばかりでした。

 韓国や朝鮮の人々には居丈高な区長は日米関係となると一転して、軍事同盟の強化、いっそうの従属を主張して全く卑屈です。日本の伝統や誇りなど語ってほしくありません。


わくわくの日々

 新人議員の私にも、時々生活相談が来ることがあります。一昨年のリーマンショック以来の雇用環境の悪化はひどいものです。
 特に若い人の相談が多いことに驚きます。20代の全く健康な男性が派遣先の契約が切れたので次を探そうと10も20も面接を受けても採用されず、家賃も払えず、食事もしていないというケース。あるいは、工事現場にいたが次の仕事が見つからず、泊まるところを失い路上生活になったという30歳の方。
 中には知的障害があると思われる方で、「貧困ビジネス」につかまって逃げ出してきたという方もいました。
 「杉並寮しなどの「自立支援センター」では就労支援をしていますが、就労してもうまく続かないケースも多いとのこと。その中には就労より福祉的なケアの必要な方も多いのではないかと感じます。