松尾ゆり

わくわくレポート147号 2012年6月

消費税引き上げに反対しよう

 5月末、国会で開かれた「消費税にモノ申す各界懇談会」に参加しました。湖東京至さん(税理士・元静岡大学教授)の講演と、民主党・川内博史さん、社民党・福島みずほさんら各党の消費税反対派国会議員も登場。

 静岡からかけつけた商工会の方の発言。「消費税が始まって200万軒の中小事業者が廃業した。民主党は政権交代したとき4年間消費税を上げないといった。私はたちはすごく期待して応援したのに、いま非常に憤りを感じている」「経営が厳しく、銀行から借金をしないと消費税が払えない」などの厳しい現状も報告されました。

消費税が上がれば、大企業は笑いがとまらない

 湖東京至さんが講演の中で指摘された消費税の大きな問題点のひとつが「輸出還付金」です。

 消費税は粗利にかかる税であり、事業者は赤字でも納税しなくてはなりません。特に中小企業にとっては、大きな負担になるわけです。ところが、輸出大企業たとえばトヨタなどにとっては、逆に消費税はもうかる税です。輸出した商品分の消費税額が「外国に売ったので転嫁できなかった」という理由で還付されるためです(実はその分の消費税は下請けの中小零細企業が発注者に転嫁できず自己負担しています)。

 その額は毎年約3兆円以上にのぼり、私たちが苦しい中から払った消費税のなんと約4分の1は、企業に返されます。事実上の輸出補助金といえます。

■ 消費税還付金上位企業(2010年度)

 これらの企業にとっては、消費税は高ければ高いほど儲けになり、10%、15%となれば黙っていても返金が増えるばかりで笑いがとまりません。経団連などが消費税引き上げを推進するはずです。逆に、全国の税務署でもトヨタなどの大企業を管内にもつ税務署は消費税が大赤字です。

■ 消費税収がマイナスになっている税務署トップ3】(2009年度)

 湖東さんのお話によると、元々消費税はフランスで輸出補助金のテクニックとして編み出されたそうです。そうした来歴もうなずけます。

松尾ゆり

「杉並・老後を良くする会」がのこしたもの

 「杉並・老後を良くする会」が3月で惜しまれながら幕を閉じ、このたび「感謝の会」が行われました。杉並というと「原水禁運動発祥の地」といわれます。原水禁のように有名ではないけれど、杉並区民の底力を示し続けたもうひとつの水脈がこの「老後」の会でした。

 ちょうど40年前に結成され、全国の高齢者福祉の先例となっていった「老後」の活動。手弁当で献身的な活動をされるボランティアはほかにもあると思います。しかし「老後」の特徴は、それにとどまらず、行政や福祉団体と協力し、あるときはやりあいながらも、新しい政策や制度を生み出していくしたたかなパワーを持っていたことです。

 会に集まった方たちの幅広さ(都や区の職員、社会福祉協議会、大学教授など研究者、他のボランティア団体等々)、そしてその方たちとの信頼の深さを見たとき、大きな影響を与えたグループだったことがよくわかりました。それと「とにかくよく学んだ」ということ。かつての区幹部の方の回想に「どういうわけだかわからないが大学の先生や専門家から助言をうけている」と書かれています。

 「杉並方式」といわれたお弁当の宅配活動にはじまり、後には社会福祉法人を設立し、現在は区内に特養2カ所とデイサービス、介護ヘルパーなど多岐にわたる事業を展開しています。ボランティア活動にとどまらず、福祉行政そのものを変革し続けたパワーの根源は「住民自治」でした。