わくわくレポート156号 2013年8月
参議院選挙が終わりました。憲法、原発、TPP、消費税などの多くの論点を野党は争点にすることができず、自民党の圧勝を許しました。
選挙が終わった途端、消費税引き上げ、解雇規制の緩和など、暮らしに打撃を与える政策が吹き出しています。集団的自衛権や自衛隊の海兵隊化など、憲法改悪を先取りして、米軍の先兵にしようとする動きも勢いづいています。マスコミは「アベノミクス」をはやしたてますが、国民の大多数にとっては、物価が上がっただけでいいことはありません。既成の政党には、期待できません。地域の生活のなかから、政治を変えるためにねばり強く活動していきたいと思います。
特集1:保育園を考える
今年の初め、保育園に入れない保護者の皆さんが行政に対して異議申し立てをする運動が杉並区から始まり、各地に広がりました。
「認可保育園を増やして!」
杉並区は認可保育園を増やすことになりましたが、待機児童すべてをカバーすることは到底できません。しかも、区は「区立認可は建てない」方針で、今回一気に株式会社立を増やします(右上表参照)。企業破綻のリスクや人件費削減=子どもの待遇劣化が心配されます。
田中区長は「認可保育所一辺倒は時代遅れ」と発言、東京都の新しい認可外保育施設「スマート保育」第1号が杉並で誕生しますが、認可外施設ばかり増やしても子育ての安心は確保できません。「緊急対策としてはやむなし。でも、本当に安心できるのは認可保育園」という保護者の声を、国も都も区も真剣に聞いてほしいと思います。
杉並区の保育計画(「緊急推進プラン」より)
(2013年3月~2014年4月の保育定員増内訳)
▼新設
認可保育所(6所)*1 466名
区保育室(2所) 60名
東京スマート保育(6所)*2 90名
計 616名
▼増設・増枠
認可保育所 200名
家庭福祉員(保育ママ) 9名
私立幼稚園預かり保育 10名
計 219名
新設・増設・増枠の総計 835名
*1:6所すべて私立(うち4所は株式会社立) *2:うち5所は2013年7月現在公募中(未定)
保育園の事故が激増
2012年の全国の保育園の死亡事故が18件にのぼったと発表されました。前年と比べても増えていますが、これはとんでもなくひどい数字です。
2001年、保育園定員の弾力化や保育士の資格要件緩和が行われ、それを境に、それまで40年間で15件しかなかった保育園での死亡事故が激増しました。
2004年度から2012年末までの死亡者数は96名(うち認可32名、認可外64名。朝日新聞6月6日付)。そして、昨年はなんと1年で18件! 本来死亡事故などあってはならないのに、保育施設が子どもにとって安全な場所でなくなっているのです。 昨年はケガなど含む事故数全体でも145件と、前年から1.6倍に急増しました。
これから保育園の基準はいっそうの規制緩和が予定されています。子どもたちの安全が心配です。荷物のように預けて詰め込むわけにはいかないのです。[郵送の方は別紙記事「立ち上がった杉並の母親たち」もご覧下さい]
変わる制度 介護も保育も実質削減
「社会保障制度改革」の検討で、国はサービスを縮小し(お金を出さず)地方自治体と利用者自身の責任で行う方向が打ち出されています。
介護保険:利用者の1割負担を引き上げ。軽度の人は保険からはずす。軽度の人のサービスは保険外で各地方自治体が提供。
保育園:認可保育園をふやさず「小規模保育」制度を新設。設置基準を緩和(保育士の半数は無資格でよい。面積基準は地方ごとの「参酌基準」=必須ではない)。
特集2 :杉並のまちづくり
★「外環の2」めぐり、住民無視の東京都
外郭環状道が地下を通る高速道として着工されましたが、地上部街路(外環の2)については、住民側は「地下にもぐったはずの外環の地上部道路が残っているのはおかしい」と追及しています。しかし、昨年突如「外環の2」の一部分だけ抜き打ち的に事業認可されてしまいました。練馬区の皆さんは裁判に訴えています。
5月に開かれた「杉並区話し合いの会」でも、東京都は住民の意見を全く無視、議事に直接関係のない説明を一方的に棒読み。「話し合いの会」なのに、説明さえ終わらせればよしと言わんばかりです。
★久我山の公園計画で民家立ち退き??
久我山にあるNHKグラウンド跡地は、現在公園として活用されていますが、これから、隣接する財務省、王子製紙のグラウンド跡地とともに「都立高井戸公園」として整備されていくことになります。災害の際の広域避難所にもなる広々とした公園ができていいなあと思っていました。
ところが、ある会合で地元久我山の方の発言を聞いてびっくりしました。公園の計画予定地の中に民家約100戸が含まれているというのです。民家の立ち退きがなくても、公園は十分機能します。住宅地を含まない計画に変更すべきです。
また、公園の隣には道路の計画路線(補助216号線)もあり、杉並区は今年定めた新しい「まちづくり基本方針」でこの道路を重点路線としています。こちらも多くの立ち退きが発生するおそれがあります。
★下井草・井荻・上井草まちづくり協議会
西武線の連続立体交差計画にともなうまちづくりをどのように進めるか、区が呼びかけて町会・商店会など住民が、協議会で計画を話し合っています。現在、中井-野方駅間は鉄道の地下化が進められていますが、野方以西は未定です。立体交差の場合、一般的には鉄道が高架になる場合が多く3駅も高架の可能性が高いと思われます。今年の秋、3つの協議会のプランがまとまっていきます。ご注目ください。
地域の朝鮮学校とともに
高校授業料無償化が実現してから4年になりますが、朝鮮学校だけはいまだに無償になっていません。3月末、無償化を求める5000人規模の集会・デモが行われ、参加しました。
阿佐ヶ谷には朝鮮学校(東京朝鮮第九初級学校)があります。子どものころは男子が朝鮮学校の生徒とケンカをしたとか聞いたこともありました。しかし、今では近隣の小学校とも、保護者ぐるみ、地域ぐるみのおつきあいが広がっています。
子どもたちが自国の文化を学ぶ機会を奪う権利は誰にもありません。まして、国家間の政治的な問題の犠牲にすることは許されないことです。
沖縄問題は日本問題
4月末、政府が「主権回復の日」の式典を予定する中、全国の地方議員らの呼びかけによって「『オール沖縄』に連帯し、真の主権を取り戻す集い」が開かれました。沖縄では、保革を超えて「オール沖縄」で普天間基地問題、オスプレイ配備反対に取り組んでいます。沖縄県議・玉城義和さんは「基地問題は、日本が真の意味で主権国家になれるかにかかっている」と訴えました。
TPPは農業だけではない
6月、杉並区の4つの市民団体が共同で「TPP参加!私たちの暮らしはどうなるの!?」を開催しました。講師の鈴木宣弘先生(東大教授)はまず、自民党の総選挙公約は「TPP反対」だったのに、政権をとった途端、参加表明したのは、これは国民に対する詐欺だ、と怒りを表明されました。さらに、
・TPPは農業だけの問題ではない。北海道で農産物の関税ゼロになったら人が住めなくなる。
沖縄もサトウキビが壊滅したら尖閣諸島のように無人の島が増える。
一次産業はまさに領土問題だ。
・たとえば学校給食で地元の食材を使うことも、TPPでは非関税障壁として訴えられることになる。
・TPPを国会で批准するときがくる。そのときまでに、国民的な議論を喚起しなければならない。
…などのお話をうかがって、参加者からは「私たちも運動しよう」との声があがりました。
(上記の講演内容等紹介の文責はすべて松尾ゆり)