松尾ゆり

わくわくレポート157号 2013年10月

えっ!児童館がなくなるの!?

 先月杉並区が発表した「施設再編整備計画(素案)」では、児童館事業の全面廃止が打ち出され、衝撃が走りました。杉並区には41の児童館(各小学校区にほぼ1館)があり、これほど児童館の充実した自治体はありません。小学生やベビーカーの赤ちゃんとママも歩いていける身近な交流の場です。そんな児童館がなくなる??

児童館だけじゃない。
区の施設も政策も、根本から変わる!

 この「施設再編整備計画」は、まだ区民に全く知られていません。しかし、私たち区民に身近な多くの問題を含んでいます。例えば…

たとえば阿佐ヶ谷地域では
・ 阿佐谷区民事務所・阿佐谷会議室廃止
・ 産業商工会館、阿佐ヶ谷地域区民センターは杉一小と複合施設に
  (実質的に縮小・廃止)
・ 就労支援センターは現在の産業商工会館からあんさんぶる荻窪へ移転など

保育園増やすというが

 ゆうゆう館・児童館などを廃止、保育園を増設するといいますが、区立保育園は建てない方針であり、その運営を行うのは株式会社になっていきます(いま予定している区内の新規認可保育園はすべて株式会社)。質と量を保証していた区の公的責任は後退します。

福祉の質の劣化

 介護も保育も国の制度改革が進められ、設置基準・人員基準を設けない(または緩和した)質の低い施設が乱造されます。区民財産である土地建物を安価に提供して営利に供することになります。

「小さな政府」、しかも公共事業は利権に

 この計画が今の杉並区政の全てをあらわしているともいえます。政策優先でなく財政優先。区民のために区役所が何をしなければならないか、ではなく、ひたすら「小さな政府」をめざす。事業を切り捨てることが区役所幹部のポイントになる。そこで生じた財源は区民に還元されるのではなく、膨大な公的施設のスクラップアンドビルドにあて、その利権は区長や区議が利益誘導をはかる、という構図になるでしょう。まったく区民不在の区政です。

消費税引き上げ「困る!」の声が多数

 安倍首相は10月1日、来年4月からの消費税引き上げを表明しました。「消費税は全額福祉に使う」といいながら、同時に景気対策5兆円と法人減税1兆円も発表しました。これでは増税分は消えてしまいます。しかも、来年度福祉の「充実」にあてるのは増税分の1割の5000億円にすぎません。さらに社会保障費は、これから2~3年で1兆円の削減を求められます。小泉政権時代以上の削減幅です。

 松尾ゆりがうかがった地域の皆さんのご意見では、消費税引き上げに「反対」が約6割と多数。理由は「家計に負担」のほか「消費税の前にやることがある」(富裕層への増税、物品税の復活、無駄を省く)、「景気に悪影響」など。「賛成」は約1割(「子ども世代に負担を負わせないために」など)。残り3割は「私はいやだけど、仕方ないのかなあ…?」という「△」の方。

 また賛成・反対を問わず、「家計には影響が出る」がほとんどでした。商店では「価格への転嫁は無理。ただでも不況なのに、買ってもらえなくなる」「仕入れは上がってもうちは値上げできない」など。「円安で材料費が上がって困っている」「厳しい。生き残れるかわからない」というせっぱ詰まった声も聞かれました。多数を占める「困る!」の声が政治に届かない現状を変えたいものです。

杉並区施設整備再編計画(素案)について


小さな政府、しかも公共事業が利権に

 ひとことで言って、この計画が区政の全てをあらわしているのでしょう。政策優先でなく財政優先。区民のために区役所が何をしなければならないか、ではなく、ひたすら「小さな政府」をめざす。事業を切り捨てることが区役所幹部のポイントになる。そこで生じた財源は区民に還元されるのではなく、膨大な公的施設のスクラップアンドビルドにあて、そのことにより区長や区議が利益誘導をはかる、という構図になるでしょう。(安倍政権のミニチュア版)

人員合理化

 児童館が全廃されますが、これは、杉並区の人員合理化・労務管理の大きな山場でもあります(すでに学校給食・警備・用務、保育園、図書館などが民営化で大幅に削減されていますが、児童館は残った大きなかたまりのひとつです)。

杉並の文化の断絶

 児童館問題は、杉並区が41館もつくって重視してきたはずの児童館事業という文化を何の評価もまた反省もなく、一方的に投げ捨てることでもあります。中央図書館は蔵書を削減、縮小するとあります。科学館も実質廃止です。

【関連】えっ!児童館がなくなるの!?≫


民営化

 保育園の増設を口実に、ゆうゆう館もつぶされます。保育園が増えるのはいいですが、区立保育園は建てない方針であり、その運営を行うのは株式会社になっていきます(いま予定している区内の新規認可保育園はすべて株式会社)。また、学童クラブも民間委託に変わっていきます(現在も児童館以外の学童クラブは委託)。質と量を保証していた区の公的責任は後退します。

福祉の質の劣化

 介護も保育も国の制度改革が進められ、設置基準・人員基準を設けない(あるいは緩和した)質の低い施設が乱造されます。その受け皿施設を用意する計画でもあります。区民財産である土地建物を安価に提供して営利に供するということです。

 高齢者向け住宅「みどりの里」については「民間と協力して住まい確保」とあり、つまりは不動産屋さんに頼って自分で探せ、ということです。住居の保障という福祉の基本をやめてしまうのです。

区民の自由な活動に制約

 集会施設が統廃合されます。また、あんさんぶる荻窪3Fの談話コーナーも廃止されます。ゆうゆう館、児童館の廃止とあわせ、区民が自由に集う場所が少なくなります。「施設」案と同時に発表された「使用料等の見直し」案で、登録団体使用料が倍に値上げされることも、区民には二重に制約となります。

受益者負担:平等性の毀損

 「受益者負担の原則」が「使用料」案の冒頭にかかげられています。地方も含む政府は、住民のために必要な事業を税金で提供するのが仕事です。その際、所得の低い人でも利用できることは当然の条件です。「受益者負担」は、「同じサービスを受ける人は同じ負担」ということになります。税の再分配機能という言葉は、最近の公務員の辞書にはなくなったのでしょうか。