松尾ゆり

わくわくレポート160号 2014年2月

消費税、介護保険、年金

 4月から消費税が8%に上がります。その他にも、70~74歳の方の医療費自己負担が2割へ引き上げ、年金保険料の値上げ、逆年金支給額の引き下げと負担増が目白押しです。

 さらに来年、介護保険は所得次第で自己負担が2割へ引き上げ、他方、要支援の方は介護保険が利用できなくなる、特養には要介護3以上でないと入れない、などの制限が計画されています。 負担がどんどん増えるのに、福祉の水準はどんどん下がっていきます。生活は苦しくなるばかりです。

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「あんさんぶる荻窪」交換の意味がわからない!

 杉並区の「施設再編整備計画」の説明会が1月下旬に開かれました。荻窪税務署と「あんさんぶる荻窪」の財産交換にはとりわけ質問が集中しました。「あんさんぶる」は福祉事務所、児童館などがあり、多くの区民が相談や会合で利用します。荻窪駅から徒歩3分の一等地をなぜ手放すのでしょう。

 杉並区は荻窪税務署と公務員住宅跡地を利用して特別養護老人ホーム(特養)を建てるため、税務署を移転する場所が必要であり、それには「あんさんぶる」しか適地がなかったといいます。

 しかし、税務署が移転しなくても、公務員住宅跡地を買えば、特養を建てる土地は十分です。また、借地(国から賃借)に建てる方法もあるはずです。あるいは、荻窪北口には旧若杉小学校跡地があり地域では福祉に使ってほしいとの声もあるそうですから、こちらに建てればよさそうなものです(旧若杉小学校跡地は7400平米、税務署・公務員住宅跡地は6300平米であり、小学校跡地のほうが広く、しかも区有地なので無償で使える)が、区は完全に否定的です。理解に苦しみます。

 また、荻窪税務署の現在の延べ床面積は2000平米ほどであり、区内の建物で適切なものがないとは考えられません(あんさんぶるの延べ床は7000平米)。

 聞けば聞くほど「あんさんぶる」を差し出す理由は説得力がありません。きっと区民に言えない別な動機があるのでしょう。

「声なき声」はみんな賛成!?

 同じく説明会で。「反対意見が多ければ計画は変更するのか」との質問に対し企画課長のとんでもない答弁。「『声なき声』というものがある。意見を出すのは反対の人が多く、賛成の人は黙っているもの。意見を出さない大多数の人は賛成と考える」

 反対意見は聞く必要なしという姿勢。住民に支えられているという謙虚さのカケラもない驕りたかぶった回答に唖然としました。こんな方ばかりではないと信じたいですが…。

※「声なき声」
60年安保反対運動に対する岸信介元首相の「国会は騒がしいが後楽園球場はいつもどおり。私には声なき声が聞こえる」との発言が有名。

松尾ゆり

雑魚寝の老後…?

 1月13日付朝日新聞は1面トップに「行き場なく雑魚寝の老後」とありました。特養などの高齢者施設が不足し、家族が十分介護できない方々が保険外の「お泊まりデイサービス」に流れています。特養などの介護保険施設と違い、設置基準がないため、劣悪な環境になっているところも多く、一室に男性も女性も雑魚寝という例まであるとか。

 知人が「お泊まりデイ」で働いていますが、何ヶ月も連泊の方もいるそうです。看護師・医師がいないため便秘薬すら出すことができず、家族が病院に連れて行くのを待つしかないとのこと。

 2月13日の同じく朝日新聞1面には「時々入院、ほぼ在宅」の記事が。手術や発作の急性期のみ入院し、それ以外は状態が重くても在宅という制度に変わっていくとのこと。先日、寝たきりのお姑さんと胃ろうのご主人を在宅で介護されている女性のご苦労をうかがいました。今でもすでに、多くの方にとって、介護の負担は限界にきているのです。

 家族に介護を任せ、できなくなれば、民間の劣悪な宿泊施設しかない…。長年社会を支えてきた先輩方にこんな終の棲家しかないのでしょうか。最低限、人間としての尊厳を守りたいと願うことは決してぜいたくではないはずです。