松尾ゆり
わくわくの日々

文教委員会
科学館の廃止を可決 

●2015-12-04

 11月30日に開かれた杉並区議会文教委員会では、科学館の廃止、区立6図書館の指定管理、および高円寺地域小中一貫校(高円寺中、杉四小、杉八小統合)反対の陳情などが審議されました。私は科学館の廃止、図書館の指定管理などに反対、陳情は採択すべきとの意見を述べました。関連する質疑とともに掲載します。

杉並区立科学館について

◎科学館の業績について

(松尾)
 各学会からやめないでくれという声が上がるくらい高い評価を受けている科学館の業績、功績についてはどう評価しているのか。また、新しい事業、出前型・ネットワーク型については、楽しかった、アンケートでも好評という結果だが、問題点もあると思う。どちらもいい面もあり悪い面もある。変えていかなければいけない面もある。いま質疑を聞いていると、科学館はいろいろ問題点があったということばかりが強調され、新しい事業はとてもすばらしかった、うまくいっているということばかりが聞こえる。両面を見て評価をしていただけるとよいと思うが、どのような認識か。

(生涯学習推進課長)
 科学館は科学教育センターとしての45年以上の歴史を刻んできた。多くの小中学生の教育、区民の科学的関心を支えてきた。科学館がなくなっておしまいということではなく、継承・発展させていくのが今の取り組みであり、今後の新たな拠点づくりと考えている。

◎次世代型科学拠点の内容検討が不足

(松尾)
  次世代型科学の拠点についての報告書について質問する。事業者「丹青社」(報告書を作成)はどういう会社か。

(生涯学習推進課長)
 同社は国や自治体の科学教育についての計画策定、調査研究、施設の活用業務についての実績があり、豊富な経験を有する。

(松尾)
  丹青社のホームページを見たが、「商業空間、パブリック空間、ホスピタリティ空間」など空間デザインや調査研究をする会社。たしかに博物館なども手掛けてはいるが、博物館の内容というよりは、施設のありかたや展示の仕方などの専門家。この報告書を見ても、専門家にヒアリングをしたという記述はあるが、どういった内容、最新の科学の知見として何が必要、といった言及がない。今後、区として専門家、学校現場の先生方、公募区民なども交えた形での検討が必要と感じた。

 報告書の中で、3名の専門家に意見を聞いたことになっているが、3名がそれぞれの立場から、専門家としての責任ある発言を提示されているとは受け取れない。それから洪さんという東京大学の方は丹青社の社員であるようだが。

(生涯学習推進課長)
  現在籍をおいている場所が東京大学の総合研究博物館。国内初の産業連携ミュージアムのシンクタンク。

◎科学館と今年の事業の比較

(松尾)
  展示の内容、科学の分野については検討されておらず、施設のありかたに重点をおいた報告書となっている。学識の方の意見が不足している。また、学校分野についても、何人に聴取したのか、系統的なアンケートなどが不足しているので、今後調査を継続していただきたい。関連して、これまでの科学館と、今年の新しい事業の回数、日数が書かれているが、現時点での参加者の人数等がわかればお聞きする。

(生涯学習推進課長)
  科学博覧会2328人、移動式プラネタリウム2600人、観望会1300人、ワークショップ170人、中学生フューチャーサイエンスクラブ95人、すぎなみサイエンスフェスタ1000人、科学講演会60人、杉並名寄中継講演会250人。合計7803名。

(松尾)
  一昨年25年度の数字で、生涯学習のうち子どもたちの理科教室をのぞいて約1万人、回数にして168回が行われている。今年と比べて遜色のない事業を拠点型の科学館でもやっていたと認識している。また、当時、科学館から派遣、出張というかたちで19回、1800名近くの方が参加という実績がある。必ずしも拠点型で身近な地域に出向いていなかったかというとそうではない。次に、子どもたちのフューチャーサイエンスクラブに対し、これまで小中学生の夏休みの科学教室、通年の科学教室がさまざまな分野にわたって行われていた。これらの受講人数は。

◎子どもたちの科学教室、小柴博士の展示

(生涯学習推進課長)
  フューチャーサイエンスクラブ95名。26年度は小中学生288名。

(松尾)
  フューチャーサイエンスクラブはのべ人数で400人。一昨年の科学館の実績では、夏休み小学生科学教室358人、中学生が245人。全期通したものを合わせて2000人以上が参加したという実績がある。今後とも、科学館と遜色ないものにしてほしい。
 小柴さんの展示。カミオカンデの部品があることは素晴らしいことで、今朝も東京新聞で梶田先生がカミオカンデの部品をスウェーデンに寄付するという記事があった。雑誌(一般向けの天文雑誌「星ナビ」12月号)にも杉並区の科学館に部品があるということが紹介されている。せっかく展示があるので、来館は自由ということになっているが、あれだけみてもなかなかわからないので、説明員をつけて宣伝するなどを希望する。

(生涯学習推進課長)
  小柴さんの展示については、移動式にリニューアルして、新たな研究成果や梶田先生の研究なども加えてリニューアルするため相談を進めている。ニュートリノの世界は難解な部分があるので、このような展示にあわせて展示解説もやっていきたい。

(松尾)
  新たな拠点がどこにできるのか、跡地がどうなるのか。井荻のまちづくり協議会で意見として、井草の中継所跡地が使われていない、比較的新しい施設、機械もあり「工場萌え」で見に来る人もいるのではないか、科学の拠点に利用してはどうかという意見がある。報告書にも「駅近」という表現があるが、駅は中央線ばかりではない。井荻の駅から近いので、検討していただきたい。

(教育委員会事務局次長)
  区全体の再編の中で検討する。

◎◎科学館廃止に反対する意見◎◎

 科学館は1969年に開館。もともと小中学校の先生たちが、子どもたちの科学教室を行っていたことがベースとなってつくられたというふうにうかがっています。地域の方は「あそこはうちの土地だった。親父は売りたくなかったが、杉並区の方が、子どもたちのためだからと何度も熱心に訪ねてこられたので土地を提供したんだ」と発言しておられました。私はそれを説明会でききました。50年ほど前に断腸の思いで、しかし、子どもたちのためだからと土地を提供してくださった方のおかげで科学教育センターをつくることができました。それが区の財産になったからということで一方的に処分されるのは残念なことだと思います。

 例えば日本天文学会からも、廃止は思いとどまることができないかという要望が出されています。その中では「地域住民と児童生徒のための科学教育施設の嚆矢である。」「よい意味で保守的な学校支援を続ける一方で学究的な講座なども展開をし、他の施設とは一線を画しているもの」と高く評価をいただいておりました。こうした外部の声、専門家の皆さんには、私たちが思っている以上に評価されてきたんだということがわかりました。多くの研究者を輩出した施設でもありまして、杉並区民としての誇りある施設であると思っておりますので、私はこの施設の廃止には反対いたします。

 また、これまでの杉並区の方針である、2007年に出された科学館の構想懇談会の提言というのがございます。その中で、今後とも社会教育の部門を充実させていくとともに、科学館の建て替え、充実について言及されていますが、こうした方針と、現在の方針との転換がどこで行われたのか、私にはよくわかりません。これは、これまで一般質問等で申し上げましたので、今日は質問しませんでしたが、そういった問題点もあると思います。

 また、区民の中にも根強い反対の声がございます。施設再編のパブコメでは280人・団体の中で60件の方が科学館の廃止に反対という意見を書きこまれています。議会にも現在陳情が出ています。署名は1600人余りということです。その一方、科学館の利用者、地域への公開の説明会というのはまだ行われていないという現実があります。区民の理解は不十分、周知も不十分というふうに思っております。また、科学館廃止の理由として老朽化、バリアフリーの問題ということがあげられていますが、現地で縮小建て替えなども考えられ、科学館そのものを条例上廃止することにはつながらないと考えます。

 最後に、質疑の中で解明したことでございますが、新しい科学の拠点についての報告書も、外形的な部分、展示の内容、施設のありかたについては一定の見解が示されていますが、その科学的内容については検討はこれからだというふうに思いますので、今後専門家、区民をまじえた検討が必要になっていくと思います。こうしたことを踏まえて、本議案に対しては反対の意見を表明します。

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